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令和4年度仁泉会大阪府支部連合会 秋季学術講演会報告

[ 2023年03月17日 ]

令和4年度仁泉会大阪府支部連合会

秋季学術講演会の報告

学27期 村木宏要

 

令和4年11月12日(土)ホテルグランヴィア大阪20階「名庭の間」にて仁泉会IN近畿と題した令和4年度の大阪府連学術講演会が3年ぶりに開催されました。新型コロナウイルスの感染防止の為、現地とZOOMを併用したハイブリッドでの開催となり、74名(現地参加者41名、オンライン参加者33名)の参加がありました。会に先立ち興和株式会社からの情報提供が行われました。その後、大植睦先生(学40期)の司会で会が始まりました。

最初に、霜野良一大阪府連会長(学28期)が挨拶されました。新型コロナウイルス感染拡大以後は懇親会をはじめ支部長会や学術講演会、理事会等の事業開催が出来なかったが、令和4年度からは理事会、支部長会を開催し、今回の学術講演会も開催でき、大変嬉しく思っています、今後は府連のホームページも立ち上げ府連の活動のみならず先生方の近況や活動を広くお知らせできるようにしていきたいと話されました。

続いて、来賓の大阪医科薬科大学仁泉会理事長 安藤嗣彦先生(学20)が挨拶され、母校で新病院A棟が完成したこと、救命救急センターが稼働したことなど母校の近況が報告されました。また、本部事業として奨学金の貸与や学会助成、仁泉会ニュースの発刊などの事業を粛々と行っていること、コロナの影響で会員交流の機会が減っていることは同窓会としては大変厳しい状況だと思っているとお話され、学術講演会が開催に至ったことを大変嬉しく思っていると述べられました。

学術講演会:

「これからの循環器医療:動脈硬化診療とDX(デジタルトランスフォーメーション)」

森川浩志先生(学36期)が座長で、今回、大阪医科薬科大学 内科学Ⅲ・循環器内科

教授 星賀 正明 先生を講師にお招きし、ご講演を賜りました。主題の話の他に母校新病院のフロア紹介をいただきました。

以下その講演内容をスペースの許される限り紹介いたします。

最初に母校の循環器内科の歴史を紹介させていただきます。長期間(49年間)循環器内科が2つの講座に分かれていましたが、現在では1つに統合され教室員一同が一体になり日夜励んでいます。本講演では、動脈硬化性疾患診療の進歩、心不全診療の新しい取り組み、医療DXの順にお話をさせていただきます。

☆動脈硬化性疾患診療の進歩

動脈硬化は血管の内皮細胞障害から始まる事は知られていましたが、内皮機能の検査法が一般的ではありませんでした。既に2002年ガイドラインにおいて、冠動脈疾患の再発予防にLDLコレステロール100mg/dL未満が推奨されていましたが、遵守率が低いことが指摘されていました。これは糖尿病治療等で最近盛んに言われているクリニカルイナーシャ(臨床的惰性:治療目標が達成されていないのに、治療が適切に強化されていない状態)であり、その遵守率を上げるため、教室では内皮機能の見える化が重要であると考え、FMD(充血による血管反応性拡張反応)検査を行いました。当時はマニュアルでの血管径計測が煩雑でしたが、現在では自動計測や手指を用いたより簡便な検査法が普及しています。一方、急速な高齢化で急増しているのが大動脈狭窄症(AS)です。その発症・進展機序の本態は動脈硬化です。動物実験を用いた実証実験も行われています。最近では、カテーテルを用いたTAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)治療が普及し、当院は三島医療圏では唯一の施行機関として重責を担っています。TAVIは、多診療科・多医療職から成るハートチーム形成が必須となります。循環器領域ではチーム医療の推進は何よりも重要で、その象徴として2021年7月に本院に循環器センターを新たに開設しました。目的は、1)チーム医療・地域医療の強化、2)個別医療・先制医療の導入、3)人材の育成と確保などです。循環器センターではわが国の脂質異常症研究の大家である斯波真理子先生を特務教授として2022年4月から迎え特に家族性高コレステロール血症(FH)診療の拠点として活動を開始しています。特に超音波によるアキレス腱厚の測定はFH診断に有用で、ガイドラインの新しい診断基準に記載されています。

☆心不全診療の新しい取り組み

心不全、特に高齢心不全は、罹患率が高く、入退院を繰り返し、併存症が多いことがわかっています。筋力、認知機能などが次第に衰える進行性の症候群で、チーム医療・介護が欠かせません。地域ぐるみで高齢心不全を診る体制が必要です。大阪では大阪心不全地域医療連携の会(OSHEF: Osaka Stops HEart Failure)が取り組みを行っています。これは仁泉会員(学48期)の北野病院中根英策先生の提唱した心不全ポイント自己管理用紙と教育資材ハートノートを用いた取り組みです。今は大阪全域に拡がり、2022/3/30には新聞朝刊に大阪府内5大学病院の循環器内科が協力した記事が掲載されました。当科では、2015年以来急性心不全入院患者のレジストリ研究に取り組んでおり、再入院予防などの成果を発出しつつあります。

一方ニューノーマルの時代にデジタル技術トランスフォーメーション(DX)が盛んにもてはやされています。保健医療分野における人工知能(AI)の開発・利活用が期待できる領域として、ゲノム医療、画像診断支援、診断治療支援領域、医薬品開発領域、介護・認証領域、手術支援領域、PHR(パーソナルヘルスレコード)、人工知能開発基盤などがあげられています。教室では内頸静脈波形の観察にマイクロ波レーダという新技術を用いて、デジタル信号として非接触に記録観察できるプロジェクト(関西大学システム工学部鈴木哲博士との共同研究)を行っています。内頸静脈波形はその谷の深さで今まで観察しにくかった右室の拡張能をしることができ、特に高齢者心不全の診断治療に有用で、社会実装を目指しています。

☆医療におけるDX

一方DXは、今までのアナログ・物理データや個別の業務・製造プロセスのデジタル化のみを指すのではなく、組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化を通して、新たな価値創出のための事業やビジネスモデルの変革を目指しています。DXを導入しようとしたものの、形だけで終わっている場合が多いのですが、この原因は既存のシステム管理に莫大な資源が費やされているからと考えられます。必要なことは、関係者間での協働を促すために、心理的安全性(失敗を恐れない)とアジャイルマインド(俊敏に適応し続ける精神)とされます。奇しくもこの2つの姿勢は、私が現在関わっている病院医療安全推進にも必要なことです。「チーム力を高める!」 皆のキーワードです。

講演会は質疑応答を経て終了しました。

閉会の挨拶は、御前 治副会長(学33期)がされました。御前先生は3年ぶりの開催が出来たこと多数の参加をいただいたことへ謝辞を述べられ、「コロナの第8波が到来していると言われていますが、次回の講演会は是非とも現地開催で懇親会も開催できることを祈念しております」とコロナ終息の期待をこめて挨拶を閉められました。

令和5年度の学術講演会は11月11日(土)ホテルグランヴィア大阪で開催を予定しておりますので、今から予定にお加えいただければ幸いです。

 

 

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